ナショナルグリッドにおけるSpotの活用事例

Spot、ナショナルグリッドのチームの一員に

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Boston Dynamicsの元事例は こちらから

ナショナルグリッドにとって、Spot は日常業務に欠かせない存在となっており、従業員の安全確保、生産性の向上、設備の稼働時間の維持を支援しています。

マサチューセッツ州中部にあるナショナルグリッドのHVDCコンバーターステーションでは、事業責任者たちが常に、施設の稼働時間を最大化しつつ作業員の安全を守ることに尽力しています。

このコンバーターステーションの出力は2,000メガワットで、これは一般的な原子力発電所2基分に相当します。ニューイングランド地域全体の電力の10%以上を供給しており、とりわけ計画外の長期停止のようなトラブルが発生した場合には、ナショナルグリッドは顧客の需要を満たすために高コストな代替電源を確保せざるを得なくなります。

「ここはニューイングランドにとって非常に重要な施設です。もし突発的に停止してしまえば、代替電源の確保には非常に大きなコストがかかります。この施設を常に稼働させ続けるには、多くの保守作業と効果的な運用ツールが必要です。」と、ナショナルグリッドの主任技術者ディーン・バーリン氏は語ります。

従来、ナショナルグリッドでは、稼働率100%を目指す一方で、作業員を危険な設備から守る必要がありました。たとえば、交直変換所内の「サイリスタ弁室」では、設備の稼働中は人が立ち入ることができません。この5階建ての建物(サッカー場ほどの広さ)は、直流(DC)を交流(AC)に変換する施設で、内部の機器は強い電気的危険を伴い、外部からの視認も限られているため、漏れなどの点検は年に一度の定期停止時にしか行えませんでした。

「現在手がけているほとんどのプロジェクトは、Spotから得られるデータに依存しています。Spotは安全性の面でも貢献しており、今では私たちのチームの一員です。」

— ディーン・バーリン(ナショナルグリッド 主任技術者)

2019年から2020年にかけて、ナショナルグリッドのIT部門はBoston Dynamics社製の四足歩行ロボット「Spot」の導入実験を開始しました。最初は、Spotがサイリスタ弁室内の強い電磁場に耐えられるかどうかを確認するために、基本的な移動操作のテストが行われました。しかしこの2年間で、Spotは単なる実験機から、交直変換所における安全点検の中核を担う存在へと進化を遂げました。今では、ほぼすべてのプロジェクトにおいて、Spotが収集するデータが活用されています。Spotは、ナショナルグリッドにとって欠かせないチームメンバーとなったのです。

定期運用へ

初期のパイロットフェーズでのテストにより、Spotがナショナルグリッドのサイリスタ弁室内の電磁場に耐えられることが確認されました。また、Spotの障害物回避機能によって、ロボットが精密機器から安全な距離を保って移動できることも、現場のオペレーターたちに実証されました。

この初期テストの成功を受けて、ナショナルグリッドは現場に複数のフィデューシャルマーカー(目印)を設置し、Spotが敷地内を自律巡回できるようにしました。さらに、通信インフラも強化。敷地内に14台の無線機を設置してメッシュネットワークを構築し、通信の死角をなくすことで、ロボットがどこを巡回していてもオペレーターが常に接続を維持できるようにしました。

この無線ネットワークにより、オペレーターはBoston Dynamicsの「Orbit」プラットフォームを使って、コントロールルームからSpotを遠隔操作できるようになりました。これにより、従来のようにロボットのそばを歩きながら手持ちのコントローラーで操作したり、視認し続ける必要がなくなりました。

「コントロールルームからSpotを操作できるのは本当に大きいです。ロボットを使うたびに人を現場に出す必要がなくなりました。オペレーターはコントロールルームで、コンバーターステーションを監視する20個の画面を見ながら操作できます。Spotは、いわば21番目の画面です。」 とバーリン氏は語ります。

この柔軟性により、Spotは交直変換所の日常的な点検業務の一環として活用されています。人間の作業員が敷地内を徒歩で巡回する一方で、Spotは赤外線カメラを使って設備に異常がないかを確認しながら自律的に巡回します。これに加えて、Spotは2週間に一度、オペレーターに操作されながらサイリスタ弁室内を点検します。

Spotの導入により、ナショナルグリッドは点検の頻度を大幅に増やすことが可能になりました。以前はサイリスタ弁室の点検は年に1回、赤外線点検も半年に1回しか実施できていませんでした。

「このコンバーターステーションは稼働から32年になりますが、その間、通電中にサイリスタ弁室を点検する術はありませんでした。以前は、計画停止のときにしか点検できなかったのです。ですが今では、稼働中でも内部の状況を確認できます。これにより、設備の状態に基づいたより良い判断ができるようになり、資産寿命を延ばせる可能性もあるのです。」とバーリン氏は述べます。

安心感をもたらす存在へ

Spotを点検業務の中核に据えるべく、その導入を加速させるために、ナショナルグリッドは2022年初頭、Boston Dynamicsの専門チームを招き、2日間にわたる集中トレーニングセッションを実施しました。トレーニングにはコンバーターステーションのすべてのオペレーターと数名のエンジニアを含む約10名が参加しました。

「このセッションはロボットの安全な起動方法やバッテリー交換といった基本的な操作から始まりました。その後は、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を使ったプログラミング方法、ミッションの実行方法、そしてSpotを無線ネットワークに接続する方法など、幅広い内容をカバーしました。」 と、主任技術者のバーリン氏は説明します。

その結果、2023年4月には、オペレーターたちは自信を持ってSpotによる自動のホットスポット(異常発熱箇所)点検を行えるようになりました。「もしホットスポットを見逃していたら、アラームが鳴る程度の小さな問題から、火災や爆発といった壊滅的な事故につながる可能性もあります。私たちの最優先事項は安全です。Spotのような追加のツールがあることで、こうした点検が確実に実施でき、安心感を得ることができます。私は、自分たちが最善のデータを収集し、最良の判断を下すためにやれることはすべてやったと、自信を持って家に帰れます。」 とバーリン氏は語ります。

現在のところ、こうした定期的なホットスポット点検で大きな異常は見つかっていませんが、Spotはサイリスタ弁室内での手動ミッション中、小さな油漏れを検知しました。Spotに搭載されたパン・チルト・ズーム(PTZ)カメラを使ってオペレーターが漏れを評価した結果、深刻度は「10点満点中5点」と判断されました。

「致命的ではありませんでしたが、放置はできないレベルだったので、Spotの評価に基づいて計画停止を決定しました。もし気づかずに放置していたら、事態は悪化していたかもしれません。Spotがあったからこそ、的確な判断ができたのです。とバーリン氏は振り返ります。

「この交直変換所は稼働から32年が経ちますが、その間ずっと、通電中のサイリスタ弁室を点検する手段はありませんでした……。しかし今では、稼働中のホール内部を点検できるようになり、設備の老朽化に伴う意思決定のために、より多くのデータが得られるようになりました。このデータが、当初の予想よりも長く設備を稼働させ続けることに繋がる可能性もあります。」

— ディーン・バーリン(ナショナルグリッド 主任技術者)

挑戦はまだ始まったばかり

新しい業務プロセスを導入するすべてのテクノロジーと同様に、Spotの導入にも相応の時間と労力を要したとバーリン氏は語ります。しかし、その努力は十分に報われたとも感じています。

「オペレーターにとって、Spotのような追加ツールがあるのは非常に心強いことです。Spotは安全性を高め、点検作業の効率を上げ、保守作業をより確実に行えるようにし、最終的にはより良い意思決定のためのデータを提供してくれます。本当に多くのメリットがあります。ただし、正しい視点で導入に臨むことが重要です。最初の数年間は確かに大変でしたが、それが非常に重要なプロセスだったんです。いきなり本格運用できると考えがちですが、適切なユースケースを整えるには、関係者の協力が欠かせません。」と彼は述べます。

ナショナルグリッドはSpotの早期導入企業のひとつであり、ロボティクスや現場データの活用において、同業他社よりも「はるかに先を行っている」とバーリン氏は自負しています。それでもなお、Spotの可能性は「まだほんの入り口にすぎない」とも考えています。すでに赤外線やPTZカメラ以外のセンサーの活用も始まっており、たとえば部分放電の検知に使えるFluke SV600音響カメラや、トリンブル社製の3Dスキャニングツールのペイロードも検討中です。

「将来がとても楽しみです。現在Spotを本番運用していますが、それでもロボットの基本的な能力を完全に理解するにはもう少し時間が必要です。『赤外線点検に使っているから、もう完了だ』という話ではありません。このプラットフォームは、部分放電の検査や音響解析、3Dスキャンなどにも活用でき、初期コストの大幅な削減につながる可能性があります。しかも、Spotは設計上、ペイロード機器の交換がわずか5分で済むので、すぐに次の業務に移行できるのです。」 とバーリン氏は語ります。

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