シェブロンの新たなエネルギー管理パートナー

シェブロンは、ボストン・ダイナミクス社との初の戦略的企業契約を締結し、石油・ガス業界におけるロボティクス時代の最前線を走っています。
石油・ガス業界の大手企業にとって、イノベーションは単なる流行語ではなく、エネルギーの未来を支える鍵となっています。企業は市場の変化、規制強化、代替エネルギーとの競争に直面しており、シェブロンも自社の強みを活かしながら、信頼性向上や、二酸化炭素排出量削減に向けた新製品及び、ソリューションの展開を推進しています。その上で、工場設備の近代化は、これらの課題に取り組み、競争優位性を確立するための重要な要素となっています。シェブロンは、モバイルロボットへの画期的な投資を通じて、業界の先駆者としての地位を確立しつつあるのです。
シェブロンは、カリフォルニア州ベーカーズフィールドに拠点を置く、自社のパイプライン&パワー部門の熱電供給施設において、Spotを活用した重要なユースケースの検証を進めてきました。そして2023年夏、ミシシッピ州パスカグーラやカリフォルニア州エル・セグンドの製油所にもSpotを追加導入し、さらに多くの拠点でロボットを導入する意向を示す戦略的契約をボストン・ダイナミクス社と締結しました。現在、シェブロンは業界内で最も多くのSpotを保有しており、同社の資産全体を活用して、先進的なロボティクス技術を組み込むという目標に向けて大きく前進しています。
モバイルロボットは、当社の運用において確かな価値を発揮しています。Spotは施設内を自律的に巡回しながら重要なデータを収集し、それをダッシュボードに統合して可視化することができるのです。これにより、意思決定がより簡単かつ効果的になります。」
と、カリフォルニア州エル・セグンド製油所の技術・デジタルイノベーションマネージャーであるジョシュア・ホフスタッター氏は語ります。 ボストン・ダイナミクス社の石油・ガス業界担当営業マネージャーであるクリス・マッカスキー氏は、シェブロンの今回の投資が、同社の技術革新への強い取り組みを示すものだと言います。
「ロボット技術は、この業界において不可欠な存在となりつつあります。作業員の安全確保、よりクリーンな操業の実現、そして消費者のエネルギー需要に応えるため、ロボットはより効率的かつ効果的な業務プロセスを支える重要な役割を果たしています。シェブロンはSpotへの投資を拡大し、戦略的企業契約を締結することで、石油・ガス業界にとって今や重要不可欠となりつつあるこの分野で、積極的なスケールアップを図るという強い姿勢を示しました」とマッカスキー氏は述べました。
「Spotの統合されたペイロード(搭載機器)により、私たちは自動化されたルートを設定し、昼夜を問わずデータを収集することができます。これにより、現場がどれだけ忙しくても再現性の高い検査が可能となったのです。」
ーリチャード・ハーリー、自治型製品オーナー
イノベーションの探求
シェブロンは、最初にヒューストンにあるシェブロン・テクニカルセンターへSpotを導入しました。このセンターは、同社のイノベーションチームが新技術を評価・開発し、ビジネスの複雑な課題を迅速かつ大規模に解決するための拠点です。 「私たちは常に、適切な技術を見極め、投資し、前進させることを考えています。Spotは従来の技術とは異なります。ボストン・ダイナミクス社との協力により、単に技術を導入するだけでなく、どこにロボットを配置すれば、製油所の運用レベルをさらに向上させ、長期的なサポートができるのかといった、より大きな視点で方針を模索できるようになりました」と、同センターのロボット工学エンジニアであるマリリー・ファン氏は語ります。
ヒューストンで複数回にわたり検証実証(PoC)を実施した後、シェブロンはSpotをカリフォルニア州ベーカーズフィールドの熱電供給施設へ移し、本格的な運用を開始しました。ここではロボットが毎日、自律ルートを巡回し、高感度の設備を点検しているほか、可視画像と熱画像の両方を撮影し、点検データを収集しています。 Spotの導入は、生産性の向上だけでなく、安全性にも役立っています。たとえば、同施設の電力配電所では、作業員は特定の安全手順(通常、電源を落とし、厳重な保護具を着用すること)を守らなければ立ち入りが許可されないところ、Spotであれば、人間の介入なしにこのエリアを巡回できるため、作業員の安全確保が可能になったのです。この取り組みが成功したことで、シェブロンはすぐにSpotの導入を拡大し、より多様な重要業務を担わせることを決めました。
「最初に特定したユースケースのひとつが視覚的な観察です。Spotを現場の目として活用し、これまでよりも頻繁に設備を監視できるようになりました。Spotに統合されたペイロードにより、自動ルートを設定し、施設の稼働状況に関係なく、昼夜を問わずデータを収集できるようになりました」と、シェブロンの自律プロダクトオーナーであるリチャード・ハーレー氏は語ります。
企業全体への展開
Spotは、環境・安全監視や緊急対応といった用途でも活用が検討されており、さまざまな環境でその能力がテストされています。シェブロンが2023年に新たに購入した10台のSpotのほとんどは、ミシシッピ州パスカグーラとカリフォルニア州エル・セグンドの製油所へ配備されるが、2台はヒューストンのシェブロン・テクニカルセンターに送られ、さらなる活用の可能性を探るために使用されています。
「シェブロンは、大手石油・ガス企業として初めて、Spotの本格導入に踏み切った企業です」と、ボストン・ダイナミクス社のクリス・マッカスキー氏は語ります。シェブロンは今後も、ロボットの導入をさらに進めるとともに、Spotが担う業務の幅を広げていく予定です。
シェブロンのエンタープライズ・プロセス・マイニング・プロダクトオーナーであるジェイソン・ボール氏は、「設備の稼働状況を把握し、そのデータをもとに予測を立てることは、事業運営において非常に重要です。我々は、従業員が設備の最適化や保全作業の遅れの解消、次回のメンテナンスの準備などの仕事に集中できるようにしたいと考えています。Spotがそれらの時間を生み出してくれることで、私たちは今後さらに大きな成功を収めることができるでしょう。」と語ります。

Spotが搭載する多様なペイロード機器を活用することで、製油所内の数千台の設備の監視が可能となることにより、プラントの運転員は、リアルタイムで正確なデータを取得し、オペレーションを最適化することができます。
Spotは超音波カメラを使用して異常を検知し、空気漏れの可能性を運用チームに警告することで、シェブロンの製油所の効率向上に貢献しています。
また、SpotのCAM+IR(カメラ+赤外線センサー)は、設備やゲージの可視画像、熱画像を撮影することができ、シェブロンの独自のコンピュータービジョンプログラムを通じて異常を検出します。
Spotは、単に既存の点検業務を支援するだけでなく、それらを進化させる役割も果たしているのです。現在、オペレーターは現場を巡回し、音や熱の異常を自身の感覚で判断していますが、ロボット技術の導入により、こうした点検作業の効率化が可能になります。
シェブロン・テクニカルセンターのロボティクスエンジニア、ザック・プリングニッツ氏は「Spotを活用すれば、音響や温度などのデータを正確に測定し、それを時系列で追跡することが可能なのです。」と語ります。
シェブロンの安全文化を支える
Spotはプラントの安定稼働を支援するだけでなく、安全対策の取り組みにも貢献しています。Spotを活用することで、危険区域の点検を自動化し、従業員がリスクの高い環境に立ち入る機会を減らすことができ、さらに問題を早期に発見できるため、事故の未然防止にもつながっています。
「私たちは従業員により良いデータを提供し、また危険な状況から遠ざけることを目指しています。例えば、特定のエリアをより頻繁に監視する必要があるかもしれない、あるいは特定の機器の運用を減速させるべきかもしれない、といった判断を下すことができます。学べば学ぶほど、より良い意思決定ができ、迅速に対応できるようになるのです。このように、Spotは本当に大きな変化を生み出しています」と、ファン氏は語ります。
ボストン・ダイナミクス社は、シェブロンをはじめとする主要な石油・ガス企業と協力し、Spotに業界特有の安全機能を追加しました。その一例が爆発性ガスの検知センサーであり、このセンサーを搭載したSpotは、ガスを検知すると即座に座り込み、動作を停止します。これにより、ロボットからの火花が引火源となるリスクを軽減し、危険区域や電気設備がある場所でもSpotを自律的に運用できるようになったのです。
「このガス検知機能があることで、Spotの安全性に対する信頼性が高まり、安心して使用できるようになりました。」とファン氏は話します。
日常業務の精度向上
シェブロンは日常的な監視や資産点検に加え、Spotを活用して長期的な履歴データを収集する計画を立てています。例えば、同社はLiDARスキャンを用いて施設のデジタルツインを作成し、数年ごとに主要な設備の変更のために製油所を停止する際、前後のスキャンを実施する予定です。
「SpotによるLiDARスキャンを活用すれば、従来の方法に比べてデータをはるかに速く、かつ頻繁に収集することができます。この方法によってプロセスが標準化され、データ収集の誤差も大幅に減少します。」とハーレー氏は語ります。
すでにいくつかのユースケースが実証され、さらなる検証を進めているシェブロンにとって、Spotは、業務効率化への未来を切り開くために、必要不可欠な存在となっているのです。