Spot、ペンシルベニア州モンゴメリー郡保安官爆発物処理班に配備

爆発物処理班の仕事は、迅速に脅威を評価し、隊員や市民を危険から守ることが求められる高リスクな業務です。ペンシルベニア州モンゴメリー郡保安官の爆発物処理班では、ロボットの使用が標準的な手法となっています。しかし、その一方で、隊員達がボストン・ダイナミクス社の高性能ロボット「Spot」が階段を昇降し、ドアを開け、狭い空間を移動できることを知ったとき、その革新的な能力に注目せずにはいられませんでした。その後、その能力を実務で生かすべく、2024年にSpotの導入を決意しました。
「Spotの機動性と敏捷性に魅力を感じました。ドアを開けて階段を上る能力を見たとき、『これは驚異的だ』と思いました。」と、爆発物処理班のリーダーであるアレン・スチュワート中尉は語ります。
多方面での活用
フィラデルフィア郊外に拠点を置くモンゴメリー郡保安官の爆発物処理班は、全米で最も忙しい部隊のひとつであり、その忙しさは466部隊中25位に匹敵します。彼らは約4,403平方キロメートルにおよぶエリアで爆弾脅威や不審物の通報に対応しており、チェスター郡、デラウェア郡、バックス郡を含む約200万人の住民の安全を守っています。また、SWAT、HAZMAT(有害物質対応チーム)、捜索救助チームの支援も行っています。
本爆発物処理班は、カスタムロボットを政府および法執行機関に提供するコネチカット州のRADeCO社の協力を得て、Spotを導入しました。彼らの目的は爆発物の検査だけでなく、従来の地上ロボットよりも機動性に優れたSpotを使って、建物内で立てこもる容疑者の偵察を行うことでした。
「従来のロボットは、モーターやエンコーダー、鉛蓄電池を搭載した単なる機械装置で、カメラを移動させるだけのものでした。Spotはそれらとはまったく異なります。自律歩行(Autowalk)機能を持ち、多様なセンサーやオプションを搭載することができ、偵察の幅を広げることができるのです。」
ーRADeCO社のCEO、キース・ラブンデール氏
地上走行型ロボットよりも高速な移動
Spotは、現在も使用されているアンドロスF6AとiRobot 110 FirstLookという2種類の地上走行型ロボットに加わる形で導入されました。これらのロボットは平坦な地面では効果的ですが、起伏のある地形や階段の移動には向きません。過去には、SWATチームの支援中に、F6Aロボット(重さ約230kg)を隊員が階段上へ持ち運ばなければならなかったこともありました。もしそれが、Spotであったなら、数秒でその階段も登れたはずです。
「通常のロボットなら、家の階段を上がるのに20分はかかるでしょう。しかし、Spotなら、ほんの数秒です。」とスチュワート中尉は語ります。

Spotの導入
導入承認の過程で、RADeCO社のラブンデール氏はSpotをモンゴメリー郡保安官の公共安全施設に持ち込み、爆発物処理班と郡の委員会の前でデモンストレーションを行いました。
「委員会のメンバーも、Spotは爆発物処理班専用ではないことをすぐに納得し、また、他の部門にも貸し出せるロボットであるという点が特に評価されました。万が一、学校や宗教施設での危険事案が発生した場合、Spotは捜索ツールとして活用できます。SWATチームと共に出動すれば、まさに彼らの“目と耳”になれるのです。」とスチュワート中尉は語ります。
重要な偵察能力
不審な荷物や装置を調査する際、オペレーターはSpotのカメラからライブ映像を確認し、距離に応じてWiFiまたはサードパーティ製の無線システムを使用して、手元のタブレットでロボットを操作することができます。Spotにはカメラが搭載されており、荷物を運搬する能力もあるため、警察官が重い防護服を着て調査にあたる必要がないのも利点の一つです。
これにより、警察官はSpotを建物内に移動させ、視界の確保が難しい廊下や部屋を調査することができます。また、Spotは不審な荷物に接近する際に、二次的な脅威がないかをスキャンすることも可能です。
そして、Spotが爆発物を発見・確認した場合、爆発物処理班は特殊な装備を搭載した地上型ロボットを投入できます。例えば、デジタルX線スキャナーやPANES(非電気式起爆装置)ディスラプターなどがあり、強力な水流を噴射して疑わしい装置を無力化することができます。

ミッションの事前準備
スチュワート中尉と彼のチームは、Spotの自律歩行機能(Autowalk)を活用して、学校や宗教施設の事前マッピングを行い、緊急事態発生時にSpotが最適なルートを選択できるよう体制を整えています。
「モンゴメリー郡のチームは、潜在的なターゲット地点にSpotを連れて行き、自律歩行でルートを記録させることを考えました」とラブンデール氏は語ります。
このプロセスでは、建物内の戦略的な場所にQRコードに似たマーカーを配置し、それを基にSpotがルートを学習します。
「学校のマッピングは予想より簡単でした。これは非常に優れた機能で、毎回確実に動作するのが素晴らしいです。」と爆発物処理班のジョン・カグリオラ副保安官は述べます。
「私たちは、現場に持ち出せばすぐに100%の能力を発揮し、準備することなく即座に作業を開始できるロボットを持っています。まるで通常の警察犬のように、トラックから降ろせばすぐに動けるのです。」
警察犬の用に即戦力として働くSpot
銃乱射犯の侵入や、人質事件が発生した場合、爆発物処理班は「Spot」を現場に投入し、あらかじめ選択したAutowalkのミッションファイルを使用して、充電を完了した状態で初期の捜索を行います。爆発物処理班のメンバー全員が「Spot」を操作でき、必要かどうかにかかわらず、出動のたびにロボットを持ち出しています。
「私たちは、現場に持ち出せばすぐに100%の能力を発揮し、準備することなく即座に作業を開始できるロボットを持っています。まるで通常の警察犬のように、トラックから降ろせばすぐに動けるのです。」とスチュワート氏は語ります。
Spotの成功事例は、公共安全分野でのロボットの可能性を示しています。爆発物の検査、被災者の捜索、危険物がある可能性のある施設の調査など、Spotは法執行機関や救助隊にとって貴重なツールとなっています。
「これは本当に驚異的なツールです。私たちはその能力を最大限に活用したいと考えています。」
ースチュワート中尉